「先生、もうすっかり日が短くなりましたね。」
11月はじめ、ある生徒が私に向かって放った言葉です。
なんの変哲もないありふれた言葉です。
恐らく多くの人が会話の足しに使うであろう素朴なこの台詞。どのような場面で使われることを想像するでしょうか。
多くの場合、この台詞は日が傾きかける夕方からすっかり日が落ちてしまって薄暗くなったときに使うでしょう。
「こんなに日が短くなった。すっかり真っ暗だ。」
というように。
でも大真面目に正午過ぎに「すっかり日が短くなりましたね。」と言われたら?
どのような反応を示すでしょうか。
きっと「まだ昼間なのに。」と思わず口にしてしまったり、口には出さずとも腹の中で「まだ明るいのに。」と思ったりしませんか?
でも大真面目なのです。その瞬間、彼なりの独特の感性が働いたのです!なんてすごい!
これだから彼らの発見は面白い。
それではここからが本題です。
まずはじめに「どのようにしてその感性が働いたか」ということを明らかにしていくことが私にとって重要でした(そうでなければやはり『まだ昼間だよ!』と思わず叫んだでしょう)。
私は彼に対して物の捉え方の違いがあるということを再三伝えてきました。これは言葉に表現しづらいのですが、いわゆる論理的な捉え方ではなく表象イメージをイメージとして捉え、そのまま表す力に長けているのです。
それは私にはまったく想像できない世界なのですが。
とはいえ彼の表現活動を見ていると、あきらかにイメージを捉えそれを書き表すことの能力があることが分かります。
このことと関連しているか定かではありませんが、元々彼は人工的な光に弱く自然光を好みます。
だから学習中もなるべくなら自然光を望むのです。人工的な光が全くダメなのではありません。
でも自然光の中で生活している状態が最も彼にとって良い状態なのだ、ということをこれまで何度も確認してきました(夜はさすがに蛍光灯です)。
こうした背景を理解した上で先ほどの「すっかり日が短くなりましたね。」という言葉を振り返ってみると、彼にとって日中の光の変化は私たちが捉えるよりずっと大きい変化となって捉えられているのだ、ということが分かります。
今回の彼の発言はそうした特性によって、意外な言葉を発するとともに、独特の感性を持っているということを教えてくれました。